「あなたはどうしたい?」と、本人の考えを尋ねること。
元麹町中学校校長の 工藤勇一先生をはじめ、教育や支援の現場の先生方からも、こうした関わりのお話を聞く機会が増えました。
私たちNLP子育てコーチの学びの中でも、本人の主体性を育んでいくうえで、この質問は大切な位置づけにあります。
そして、コミュニケーションを学び始めたお母さんから、こんな声をときどきお聞きします。
「教わったとおり、『あなたはどうしたい?』って、ちゃんと聞くようにしているんです」
子どもの気持ちを大切にしたいという、素敵な姿勢です。
それでも「質問しても答えがでてこない 」「聞いているのに、何も変わらない」と悩む方は、少なくありません。
最近、学校を休みがちになってきた。朝の「行きたくない」が増えてきた。
そんな時期のお母さんからも、同じお悩みを伺います。
そんなとき、私たちはこうお伝えしています。
その質問は、誰のための質問でしょうか。
夕方のリビングで
学校を休みがちな子が、ソファでぼんやりしています。
洗い物をしながら、お母さんはずっと気になっていることがあります。
「この先、どうなるんだろう」
思い切って、声をかけます。
「学校のことね、行っても行かなくても、どっちでもいいんだよ。あなたは、どうしたい?」
責めないように。子どもの意思を大切にするように。言葉を選んで。
けれど子どもは黙ってしまいます。「わかんない」と言って、部屋に行ってしまいます。
「ちゃんと聞いたのに…。ここから、どうしたらいいんだろう」
ずれているのは、タイミングかもしれない
お母さんは、本人の意思を大切にするという学びを、きちんと行動に移したつもりです。
でも、少し見方を考えてみると、それはお母さんが今知りたいという、お母さんのタイミングだったかもしれません。
子どもが話したいときや、聴いてほしいときではなく、
お母さんの不安が大きくなったときに。
はっきりさせて、安心したくなったときに。
不安を解消するための質問は、どんなにやさしい言葉で包んでも、どこか「答えを求めるもの」になります。
子どもは、それを敏感に感じ取ります。
「答えられない」のには事情がある
もう一つ、大切なことがあります。
学校に行き渋っているお子さんの多くは、「どうして行けないのか」「何がいやなのか」を、自分でもうまく言葉にできません。
わかっていても、「お母さんを悲しませたくない」「心配をかけたくない」と、言えないこともあります。
子どもの中には、その子なりの事情があります。
けれど親の想像の中では、その事情が抜け落ちて、「ちゃんと聞けば答えてくれるはず」という前提になりがちです。
そうなると「どうしたい?」は、子どもにとって、答えられない宿題のように響いてしまいます。
「どっちでもいい」と言えなくても
ここで、こう思った方もいるかもしれません。
「どっちでもいいなんて言ったけれど、本当は学校に行ってほしい」
それは、ごく自然な気持ちです。子どものことを思うからこそです。
そう思う自分のことも、否定しないであげてほしいのです。
ただ「私は今、行ってほしい気持ちがあるんだな」と、自分で気づいておく。それだけで、質問の中身が少し変わってきます。
相手のための質問とは
質問の価値は、答えが返ってくるかどうかでは決まりません。
質問したあとに、どんな時間が生まれるかが大事です。
子どもが自分の内側を整理できたり、聴いてもらえたことで心が少しほっとしたり。
そんな時間が生まれるなら、答えをもらうことよりも、ずっと価値があります。
「わかんない」と言われたとき、例えばこんな言葉を伝えることもできます。
「無理に答えなくてもいいんだよ。お母さんもね、わかんないときってあるんだ。そういうとき、ちょっと苦しかったなぁ」
そう言ってもらえると、子どもは「わからないままでいていいんだ」と安心できます。
「ここからどうしたら?」と思ったら
① 不安は、子ども以外の人に聴いてもらう
親の不安が子どもに向かってしまうのは、お母さん自身が一人で抱えきれなくて辛いからかもしれません。
言いたいことを言わずに我慢するだけでは、不安はなくなりません。
友人でも、家族でも、子ども以外の誰かに聴いてもらってください。
そして、私たち子育てコーチも、その役割を担っています。
答えを出すためではなく、まずはお母さんの気持ちを受け止めるために。どうぞ、お話をお聴かせください。
不安が受け止められると、心にゆとりが生まれ、声かけの温度が変わります。
② 普段から、雑談できる状態をつくる
いつも何か答えを求められるようなやりとりばかりでは、心はゆるみません。
「今日は寒いね」「このお菓子おいしいね」
そんな答えのいらない会話が日常にあってはじめて、「ちょっと話してみようかな」「本当のことを言ってもいいかな」と思える瞬間がやってきます。
話しかけても「うん」で終わってしまう日があっても、大丈夫です。
一言でも返ってきたら、それで十分です。
質問の前に、ひと呼吸
次に「聞きたいな」と思ったら、ほんの少し立ち止まって、
「この質問は、誰のためだろう?」
と、心の中でつぶやいてみてください。
その一呼吸が、親子の間に、安心できる余白をつくってくれるはずです。
(執筆:鈴木友子COACH)
外部リンク:ホームページ https://coachsuzutomo.com/blog/
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