「僕の居場所」by龍coach

明けましておめでとうございます

私の心に残るステキな体験を一年のスタートにお伝えしていきますので、一緒に子どもたちの成長に大切なことを考えていただけると嬉しいです。

私は、お母さんたちの助けになりたいという思いから、放課後等デイサービスを運営しています。

ここで出会う子どもたちとの関わりの中で、友だちと分かり合えたことから「僕は僕でいいんだ」と思えるようになり、自分の居場所を見つけていくT君のことをお話ししていきます。

 

ある朝、T君のお母さんが裸足でデイサービスに駆け込んできました。暴れるT君から逃げてきたというのです。その日の夕方、T君とふたりで話しをしました。T君は私に背を向け落ち着かない様子でした。静かな時間が流れていきました。私は、リビングの壁に開いた穴を見ながらT君の気持ちを感じていました。

学校に行けなくなったこの2年間、どんな思いで家の中で過ごしてきたのだろう?

 

<T君、本当はどうなりたいの?>

「・・・・・」

<学校に行かないと決めるのは、勇気が必要だったよね。>

「・・・・・違うよ、学校に行かないんじゃない!だんだんと行けなくなったんだよ。」

<そうなのね、だんだんと行けなくなったのね。お母さんは転校先の学校を決めようとしているけど、、、本当の本当はどうしたいの?>

「・・・・・」

<今、あなたが失いたくないものは何かしら?>

泣きながらやっと出てきた言葉 「繋がりが無くなるのが怖い」

<繋がりって、どういうこと?>

「時々、行事があるときは学校から来ないか?と言ってくれる。わずかな繋がりの友達がいる。まだ、繋がっているんだ。それが無くなるのが怖い。」

<繋がりを大切にしているのね、お母さんに転校はイヤだって言えなかったのね。>

<ここに、あなたの居場所はある?>

「無いよ、無い。僕にはどこにも居場所がない。あの人(母)は、僕を支配するんだ、何でも自分の思い通りにさせようとする。だから大人は嫌いなんだ。」

<そうかぁ、私も?大人だけど?>

「まぁ、そうですね。勝手に来て家に入って図々しいですよね。」

<アッハッハッハッ、そうきたかぁ。悪かったね、今度は連絡するからカギ開けてよ。また来てもいいかなぁ?>

「いいですよ、まぁまた勝手に来るんでしょうけど・・・放って置かれるよりずっとマシですから。」

 

その後、放課後等デイサービスの子どもたちに、T君のしんどさ、学校に行けない辛さ、友達とうまく遊ぶ方法を知らないことを伝え、みんなで話し合いました。

Aちゃんは、とても正直です。

「うちは、あんたのこと嫌いじゃったんよ。うるさいし、バカみたいなことをするし、でもね、うちも学校に行ったら変なテンションになって、みんなに嫌われとるけん、いじめられるんよ、気持ちわかるよ。うちら仲間じゃね。」

これまたB君も正直です。

「俺もお前のことは嫌いだけど、お前が変なテンションなったらちゃんと抑えてやるよ。俺は学校の中で誰にも存在していると思われていない。空気みたいに居ても居なくても誰も気にしない。だから、みんなと同じ中学にはいかない。中学受験するんだ。」

みんなより年上のC君は、とても優しく穏やかです。

「僕は、君が変な声を出すと耳や頭が痛くなって辛い思いをする。でも、君が悪い人じゃないことは知っているから我慢をしている。正直、あっちにいってほしいと思っているんだけどね。君も辛いのだから、僕も君がおかしなテンションになったら、ちゃんと教えてあげるよ。」

こんなに正直でステキな友達に囲まれ、T君は中学受験をすることに決めました。

その後、T君から嬉しい報告がありました。

「学校には行けないけど、塾に僕の居場所が見つかりました。」

 

包み隠さず、正直な子どもたちがつくり出した空間は、とても深く優しくT君の心にも私の心にも沁み渡っていきました。子どもは子どもたちの中で成長をしていく姿に鳥肌が立つほど感動しました。大人は、その場をつくり出し、こっそり支えることができたなら、子どもたちは自分も相手も大切にできるのではないかと思いました。

大人が見えないところで、子どもたちは成長をしていることを信じて待つことが必要なんだと感じさせてもらった体験でした。

 

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